ロゼット装飾の歴史
ロゼットは、紐を円形に編んで花形のマットに作る形の総称です。主に建築の装飾として、インテリア照明や家具調度品の引き金具等、装飾品の形象に用いられています。
バラの形象を象徴する記章や胸飾り、リボンの結び方等まであり、しばしば海外の手芸雑貨の中に、ロゼットパーツやロゼットの台座にタッセルを垂れ飾りとして用いたものを見かけます。
ロゼットの装飾技法は、西洋の装飾結びやマクラメを基礎にしたパスマントリーの一つに考えることができます。
ロゼットとは
正面からの円形装飾を指して“小さなバラの花形”と訳されるロゼット。ルーツは「太陽の光条を象ったもの」(『ヨーロッパ紋様事典』視覚デザイン研究所編)というのが、歴史から知るロゼットの意味とされます。
博物館収蔵の考古品の装飾から、古代のロゼットをいくつか観察してみたのですが、テヘラン国立考古博物館収蔵の『蓮弁聖獣文壺』(BC1000年初頭期)の土器の壺の表面には、光のようなロゼット紋様が描かれています。また、カイロ美術館収蔵の『王女 サト・ハトホル・イクネトの冠』(第12王朝,B1991年)では、王女のものとされる冠帯に、ロゼットが各種の植物と組み合わせて装飾されていました。
ロゼットの起源
ロゼットの起源はエジプトを中心に諸説ありますが、古代バビロニアにまで遡り、BC3500年頃のメソポタミア文明では太陽のシンボルとして用いられ、BC2600年頃のギリシャ文明では植物や花のシンボルでした。
BC1500年頃のミケーネ美術では、ロゼット紋として様式化されていき、BC550年頃のペルシャで、ペルシャ絨毯にロゼット紋様が見られ、中世ルネサンス期になって、室内装飾の錨飾りにもなるなど、歴史の中でロゼットの形象が様式化していったことを知ることができます。
タッセル使いにロゼット
既製のロゼットを意匠装飾として用いたカルトナージュがありますが、ロゼットを自分で誂えることができれば・・と思うわけです。カルトナージュの箱に、ロゼットからタッセルを垂らすスタイルを予々思い続けていたのですが、既製品の多くは大型で、しかもロゼットの意匠は、古典的なスタイルの色彩や様式に寄っていますから、アンティークな家具や調度品には似合うものの、現代的には意匠性や素材のバランスを考慮した、ロゼットづくりが求められるのではないかと考えています。
