パスマントリーと飾り房

タッセルづくりで用いる掛け紐づくりをはじめ、首元を飾るラフ(えり飾り)や装飾を凝らしたフリンジ、ネッティング(網細工)にフィニアル装飾(頂華飾り)、そして巻き珠におよぶ装飾手法の背景にあるのが“パスマントリー”です。

タッセル・パスマントリー

パスマントリーは13世紀~16世紀にかけて、ヨーロッパのベルギーを中心にして盛んに作られていた、手編みの家庭手芸として婦人達が日用品を作ったことが発祥です。13世紀頃のボビンレースでは、三つ編みにした紐を使って、簡単な縁飾りや飾り紐を編むことを、パスマン【Passement】(くみ紐/三つ編み/ブレードを編む方法)と呼び、パスマン【Passement】がパスマントリー【Passementerie】の語源になります。今日のパスマントリー手芸は、クロッシェレースや白糸刺繍を指します。

タッセルの多くは古典的なパスマントリーという手法で作られています。パスマントリーにおける初期のタッセルは、まだ房の形態を持たず木の芯に数色の糸を巻いた珠飾りが特徴でした。今に至っては、コードの撚り合わせ方をはじめ、ブレードの編み方や糸で巻き珠に模様を付けていく手法など、パスマントリーの高度な技術によって培われてきたのです。
現代の手芸・カルチャーにおいて伝統・歴史と結び付けて、タッセルづくりをパスマントリーと表現したくなる所ですが、個人的にはパスマントリーの歴史を踏まえると、房飾り職人が組紐を作る手工芸術として培ってきたことに敬意をもちたいと思っています。

パスマントリータッセル
フィニアルを用いたタフティタッセル(2013)
タッセルレリーフ
タッセルレリーフ(2014年)