掠れに色ふ「棗だま」づくり
「棗だま」(2020年)は、なつめ形の木球に紐を巻いてカバーした“巻き珠ピアス”をつくるレッスンです。段染め刺しゅう糸で撚り合わせた巻き紐で縞柄を表現する手法が特徴です。
材料と道具について
【作品の仕様】
名称:棗だま(なつめだま)
発表:2020年4月
寸法:全長60mm/巻き珠:長さ27mm/幅16mm
構造:木球にコットン刺しゅう糸でラッピング
素材:ナツメ形木球/コットン刺しゅう糸25
手法:ダブルスネイル
装飾:9ピン/ガラスビーズ/ピアスフックを用いたピアス
【準備する材料】
1.ナツメ形木球:14φ×25mm(穴5φ)を使用
2.コットン刺しゅう糸25番(段染め)
3.ピアスパーツ:9ピン(長さ5cm)/ガラスビーズとピアスフックは用途に応じてチョイス
【製作に必要な道具】
紐を撚り合わせるコーダー/グルーガン(ホットメルト)/細密ベラ/ピンセット/ニードル/ワニクチクリップ/シリル化ウレタン樹脂接着剤
巻き紐づくり
段染め刺しゅう糸について
一綛の中で色の長さが変わる段染め糸(カラーバリエーション糸)は、マーブルカラーとかマルチカラーと呼ばれ、3色・4色を組み合わせた配色や、同系色で染め分けた配色のトーンカラー、鮮やかな色彩で配色されたビビッドカラーや、色の濃淡が連続して移り変わるグラデーションカラーまで、メーカーや商品ごとのカラー展開に特色があります。
棗だまのグラデーションカラー
2種類の段染め糸がもつカラーピッチの長さと配色パターンを捉えて、実際に巻いて試行錯誤した紐です。カラーピッチの短いコントラストを持つグラデーションカラーと、カラーピッチの長い同系のダルトーンの2種類の糸色で巻き紐にしたものが最もイメージに近かったのです。
巻き紐の太さ・撚り合わせ方
巻き紐は太さと撚り合わせてできる糸目の表れ方が変わります。双子撚りは撚り合わせの基本として、単糸を束ねた糸を双撚して1本の撚り紐にします。それぞれ何本取って撚り合わせるかによって太さが変わります。三子撚りは三束を1本の撚り紐にするため、双撚よりも太く用いる紐に向き糸目が詰まった滑らかな撚り紐ができます。巻き珠に用いる場合は、糸質と糸目の表現で使い分けます。
作品の巻き紐は刺しゅう糸25番(6st)を1束にして双撚しています。コットン刺しゅう糸は単糸6本で1束になっているので、糸カセからそのまま1束に下撚りを掛けて、2束を上撚りで合撚するとおよそ1mmの太さになります。
巻き珠の巻き方
ダブルスネイリング
棗だまは2本紐で交互に巻いていくことで、互いの色柄が交差した表現になっていくようダブルスネイリングと呼ぶカタツムリのように横に巻いて積み重ねていく手法です。スネイリングの基本手順は「巻き始め・胴巻き・巻き終わり」を押さえるのがポイントです。巻き始めは紐の固定と均等な円を描くように巻き始め、胴巻きは糸目を揃えながら並べるように巻いて、巻き終わりで木球の形に沿ったシルエットをつくって巻き終わりを始末します。
巻き始め
9ピンの輪に巻き紐を通して輪の位置で二等分します。(異なる巻き紐を2本用いる場合は、輪に結び目を合わせる)巻き始めは、木球の通し穴の上をカバーするような渦巻きをつくります。
9ピンに通した巻き紐を固定してから、ボンドを塗布して巻いて接着します。最初の小さな巻きは糸目が解けるため、持ち手の指を少し右巻きにねじって、糸目が詰まったら上から押さえて巻き止めるのがコツです。渦を描くように2本の紐を交互に半分づつ接着しながら巻いていきます。
胴巻き
胴巻きは木球の形状に沿って巻いていく向きが徐々に変化していくため、木球を持ち直しながら巻いていきます。また、巻き珠の意匠が見えてくるところなので、巻き紐が揃っているか、糸目が一定に並んでいるか、接着剤ははみでていないか等を確認しながら巻き進めていきます。
巻き終わり
巻き終わりは木球の形が小さくすぼんでいくため、糸目が解けないように巻き詰めていきます。中通し穴のギリギリまで紐を廻して巻き止めて余り紐は中通し穴の中にしまい込みます。
棗だまの完成
作品は9ピンに通したビーズで穴を塞ぎロックボンド等で接着固定しています。装飾に用いるビーズや取り付け方は、一般的なアクセサリーづくりの作業を元にして演出していただけると思います。