カルトナージュの製図寸法

カルトナージュを設計・製図するためには「仕上がり寸方」「設計寸法」「みなし寸法」の3つの製図寸法を知っておきましょう。厚紙を用いた箱の組立てができてこそ、正確な製図が活かされたと実感します。

カルトナージュ「3つの製函寸法」

厚みのある紙を成形して箱を作ることを「製函(せいかん)」といいます。一般的な薄厚紙で作られた紙器であっても、箱の蓋や底を閉じるためには紙の厚みを考慮した設計がなされています。カルトナージュは1mmから2mmの厚紙を芯材に用いて表面を布地で化粧張りして組立てるため、予めカルトンや布地の厚みを箱の寸法内に考慮した設計をしなければなりません。カルトナージュの設計においては、「仕上がり寸法、設計寸法、みなし寸法」これら3つの寸法を考えて製図をすることになります。

仕上がり寸法布地で包んで完成を想定した寸法
設計寸法芯材を元にして組立てる寸法
みなし寸法素材どうしの緩衝を想定した寸法

仕上がり寸法と設計寸法

カルトナージュづくりの始めは、どれくらいの箱の大きさにするかを考えます。このとき大きさの想定をするのが「仕上がり寸法」です。箱の高さ、長さ、幅、深さ等、完成したときに仕上がる寸法を決めるのです。

次に、想定した仕上がり寸法を元にして、箱のパーツ(各面板)を紙取りできるよう設計しなければなりません。この段階で実際に使用するカルトンの厚みや組立て方法を考慮した実寸法を明確にするのが「設計寸法」です。図は仕上がり寸法と設計寸法の違いを示した例です。仕上がり寸法(例)では箱全体の長さと幅を端から端まで想定するのですが、設計寸法(例)では想定した全体寸法内にカルトンの厚みと接ぎ方を考慮することで、実際の面取りで必要となる長さと幅の実寸法が異なってきます。

設計寸法とみなし寸法

オリジナルでカルトナージュづくりをする場合は、設計寸法に基づいた「モックアップ:mock-up」(実物大の模型)づくりをして箱の全体のフォルムや構造を確かめることが重要です。例えば、蓋箱と身箱の被せ具合や、ヒンジの閉じ具合、ドロワーの引き出す具合等、実際に使用する材料どうしの緩衝を検証するために有効な方法なのです。この緩衝性を考慮した寸法を「みなし寸法」といいます。

みなし寸法は、仮に設定した設計寸法で組立てた場合、カルトンの厚みや布地の厚み、接着剤の厚みや紙取りの誤差等を考慮すれば、仕上がり寸法になるだろうという見込みの寸法を含んだ値をいいます。“そうなるだろう”と想定して設定する寸法まで設計寸法に反映させることが肝心です。みなし寸法は、仕上がり寸法から決定した設計寸法を基にして、新たにみなし寸法に直して最終的な紙取りをします。


図は被せ式箱の断面図を元に、みなし寸法の取り方を示した例です。仕上がりを想定した設計寸法の断面図では、蓋を被せる緩衝寸法を適切に設定したとします。そうすると、化粧工程では蓋の内側に内装材の厚みが加わり身箱の外装には布地の厚みが加わるため、その厚みを実寸法にみなして、蓋と身の隙間をもっと開けることになります。みなし寸法例では、みなし寸法を身蓋のどちらに含めるかで身蓋を組み合わせたときの設計寸法が異なることを示しています。仕上がり寸法において蓋箱を活かす場合には身を狭め、身箱を活かす場合には蓋を広げる考え方をしなければならないということです。

Tassel N

モックアップはカルトンだけで組み立てた構造モデルなんですが、モックアップでちょうど良い隙間だったら、まず布地で仕上げた場合は失敗することが殆どです。特に外装に気を取られがちですが、実際は内装をどうするかで外装を定めることの方が重要です。