刺しゅう糸の撚り合わせ方
タッセルづくりに身近な手芸用の刺しゅう糸を活用しています。特に掛け紐や縛り紐に使うためには、刺しゅう糸を紐に撚り合わせる必要があります。
合撚の基本知識
糸をねじり合わせて1本の紐に撚り合わせる「合撚」(ごうねん)には、糸を丈夫にし糸としての均整を保つための効果があり、撚り合わせることによって膨らみと弾力性を持ち繊維の光沢が増してくるからです。精紡機から紡ぎ出された紡績糸を「単糸」といい、一般に市販される刺しゅう糸25番には、紡績段階で縒られた「2本の単糸」を撚り合わせて1本の「撚糸」(双糸)になっています。この撚糸をさらに複数本で絡めた状態(ストランド/編んだような細紐)にしたものがエンブロイダリーです。一般にコットン刺しゅう糸は6本(6ストランド)、レーヨン刺しゅう糸は4本(4ストランド)で、撚り紐というよりは絡まった状態にある細い紐です。
刺しゅう糸の撚り合わせ方
一般的な糸の撚糸方向は、「Z 撚(左撚り)」と「S 撚(右撚り)」で表されています。例えば、コットン刺しゅう糸の単糸は「Z 撚(左撚り)」をかけて紡績するため、撚糸は「S 撚(右撚り)」の撚合糸になっています。一方のレーヨン刺しゅう糸の単糸には「S 撚(右撚り)」がかけられて、撚糸は「Z 撚(左撚り)」の撚合糸になります。このように紡出した糸の撚り方向は繊維素材によって異なるので、必ず元にする撚糸方向を確かめることが大切です。
糸抜きと下撚・上撚
刺しゅう糸を撚り合わせるには、つくりたい紐の太さを目安に撚り合わせる本数を糸抜きして束にします。糸抜きした糸はそのままの撚りでは反発しないため、さらに同じ撚糸方向に下撚を加え引き締めて固くしておき、上撚りは逆に撚り合わせた反発力を利用するため、下撚と上撚の両方に最適なバランスを加えることが大事です。
糸は最初に「下撚」をかけて、その撚り戻りを反発させる「上撚」で撚り合わさないと撚り戻ってしまいます。刺しゅう糸は、単糸に下撚を加えて、さらに下撚とは逆の上撚をかけて撚り合わせた双糸になっているため、既に合撚された糸の撚糸方向を「下撚」にして、撚り合わせていくのです。
下撚と上撚を間違うと糸の風合いや膨らみがでない糸目の悪いコードになってしまいます。撚り合わせる本数が多いほど撚合糸の太さは増していき、撚り合わせる回数が多いほど細く固くなっていきます。