タッセル&カルトナージュ「幸せの感嘆符」  Contemporary Japanese Tassel and Cartonnage
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パスマントリー

パスマントリー【Passementerie】

古典的な装飾手法の背景にあるパスマントリー

 タッセルに古典的な手法を受け入れると、パスマントリーと表現したくなる所ですが、個人的にタッセルとパスマントリーの歴史を踏まえると、一意にパスマントリー=タッセルと捉えるには不十分ではないかと考えています。常々現代の手芸・カルチャーにおいて伝統・歴史と結び付けて、タッセルのアイデンティティを評することがありますが、房飾り職人が組紐を作る手工芸術として培ってきたことへの敬意をもっておきたいと思っています。タッセルを知れば知るほど強く肝に銘じておきたい点です。
 パスマントリーにおける初期のタッセルは房の形態を持たず、木の芯に数色の糸を巻いた珠飾りが特徴です。今でも、コードの撚り合わせ方をはじめ、ブレードの編み方や糸で巻き玉に模様を付けていく手法は、パスマンの高度な技術によって培われてきたことは確かです。タッセルの古典的な装飾手法の背景にあるパスマントリーとは何かについて捉えておきたいと思います。


文中写真:ヴェルサイユ宮殿のカーテンタッセル(レプリカ)にて撮影:Tassel N 2013年

パスマントリーの語源【パスマン:Passement】

 パスマントリーは13世紀〜16世紀にかけて、ヨーロッパのベルギーを中心にして盛んに作られていた、ボビンレースと深く関わります。13世紀〜14世紀頃のボビンレースでは、三つ編みにした紐を使って、簡単な縁飾りや飾り紐を編むことを、パスマン【Passement】(くみ紐/三つ編み/ブレードを編む方法)と呼びました。ボビンレースは、ボビンを用いて糸をねじり、交差させながら組み合わせて、布状に透かし模様を施していく手法です。それらの手編みによる家庭手芸として婦人達が日用品として作っていたことが発祥とされます。今日のパスマントリーは、クロッシェレースや白糸刺繍が正統とされる手芸を総称するものです。このパスマン【Passement】を語源として、フランスの古典語としてパスマントリー【Passementerie】と呼ばれるようになりました。


教会装飾品としてのパスマントリー

 13〜14世紀の中世ヨーロパの都市に、商工業者や手工業者でつくる同職人組合「ギルド」が成立し、後にフランスでは”フランスギルド“と呼ばれ、16世紀頃まで最盛しました。西ヨーロッパの形成において、パスマントリーは教会の建設と同時に、教会装飾品としての需要があったといわれます。13世紀のフランスでは、パスマントリーの商売が成り立ったほど、パスマントリーは教会のためのものであり、パスマンの技術を巧みに身につけた、飾り房職人や組紐職人のことを、“パスマントリー”と呼んでいたのです。
 房飾りや組紐職人による同職人組合として結成されたパスマントリーは、ルイ14世統治の間は優雅な飾り房を芸術として奨励したことで、独占的で排他的な徒弟制度となって飾り房職人の仕事の誇りとなっていたといわれます。
 1789年に始まったフランス革命後は、王制とともにギルドのような封建的特権は廃止され、産業の自由化とともに中産階級の人にも、手工芸や装飾芸術を営むことが可能になったのです。このようにパスマントリーは、組紐を作る手工芸術の流れをくんだ分野を総称した呼ばれ方なのです。16世紀のフランスでは、王室のための装飾として発展しました。タッセルの芸術性を捉えようとすると、パスマントリーの歴史を辿ってきた装飾文化と捉えることで、タッセルがもつ文化をよりいっそう明確に浮き彫っていくと考えます。

編集履歴
第一版公開:2010.04.26
第二版公開:2010.06.07
第三版公開:2011.02.21
第四版公開:2015.08.08

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